「私の場合は長いより太い方がいいわ。長いのは痛いだけだけど、太いのは最初きつくてもだんだん良くなるの。私は膣でイったの初めて。だから長さのことは心配いらないわ」
俺のペニスの長さは十二センチだが、周囲も十二センチある寸胴型だ。もう少し長さが欲しい。
俺はコンドームをペチャッとはずすと、ティッシュでくるんでゴミ箱に捨てた。すると彼女が俺の体に乗ってきて甘えた。長い髪の毛が胸をなでる。
「それに祐ちゃんにはテクニックがあるから嬉しい(笑)」
「どんなテクニック?」
「後ろからのとき、膣の壁をズンズン突いてくれること(笑)」
彼女の性器は上付きだから、後ろから突くと短いペニスは壁に当たりやすいのかもしれない。テクニックというより、そうならざるを得ないのだ。だが俺は見栄を張る。
「気づいていてくれたか」
彼女は出会い系で知り合った高松市のOL。二十五歳。最初はこんなきわどい会話をするセフレになるとは少しも思わなかった。俺も彼女も出会い系が初めてだったし、お互いに借りてきた猫のようにしていた。あまり会話もなく、ときどき不意に見つめ合っては視線を落とす。ほとんど感情を表に出さず警戒心丸出し。相手に対してというより、出会い系を通した男女の出会い自体に警戒していた気がする。
―そんなに簡単に男女の関係になれるもんか―
もっと自然な営みだと思う。まいた種が芽を出して育ち、蕾を作って花になる。男と女が春の花を咲かせるには時間と手間がかかる。出会い系サイトで興味ある相手を見つけて恋愛成就。そんな簡単なものじゃない。彼女との間には距離感があった。
だがせっかく出会った相手。何とかしたい。
「また来週会おうか。せっかく出会えたんだ。お互い嫌になるまで付き合ってみようよ」
「うん、わかった」
次のデートの日、歩道橋の階段を上っていたら、昨晩降った雪がまだ残っていて彼女が足を取られた。俺は手を引いてやった。
「焦らないで歩こうな。あわてると怪我するよ」
「ありがとう。びっくりした」
その瞬間から流れが変わった気がする。俺はずっと手をつないだままだった。
堰をきった水のように彼女の魅力が見えてくる。物静かだと思っていたが実は活発な女だということがわかる。彼女の生の匂いが漂ってくる。色が見えてくる。心の声がはっきり聞こえる。
「祐ちゃんの優しさが好き。そんな人だったのね」
デートを重ねるうちに「祐二さん」はいつのまにか「祐ちゃん」に変わっていた。距離感は十分に縮まった。
「ホテル行ってみようか」
「いいよ。お弁当買っていこう」
男と女は不思議なものだ。仲良くなるのに蕾が花になるくらい時間がかかる場合もあれば、雨が雪に変わるように一瞬の出来事だったりする。
出会い系は、どちらかというと後者の出会いを実現する場ではないだろうか。
彼女をセフレにしてそのことがよくわかった。